琉球王朝発祥の地である浦添をあとにした一行は那覇市に入り、王朝の要とも言うべき交易に関係したグスクを探します。
グスクめぐり(7)【浦添城・浦添ようどれ・伊祖グスク】(沖縄県浦添市)
琉球王朝発祥の地である浦添市には中山王国の居城であった浦添城や陵墓である浦添ようどれや英祖王の生誕地である伊祖グスクなどがあります。
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琉球王朝の交易を守ったグスク
グスクというと、琉球王朝における「軍事施設=城」もしくは「祭祀場」というのが一般的なイメージですが、それ以外の役割を担ったグスクも存在していました。
琉球王朝が中国と日本に挟まれながらも、その独立を守って地位を保持した源はやはり諸外国との交易でしょう。「海の道」すなわち黒潮による海路は古代より諸外国との交易路となっていました。浦添城で発見された金細工の原料が日本の東北地方との交易を示すように、私たちが想像するより遙かに遠方まで交易をすることにより琉球王朝は財力豊かな国であったのでしょう。
琉球を支配する王朝にとっては交易の拠点となる港湾は最も重要な拠点でしたが、15世紀から16世紀かけて琉球沿岸でも活発に活動していた倭寇によって交易路が脅かされると、その討伐に力を入れるだけでなく港湾守備も強化されていきました。
『交易船の目印となっていた波上宮』
三重グスク
三重グスクは倭寇からの防衛に軍事力を強化した第二尚氏王朝の第4代国王であった尚清王(1497~1555年)が、那覇港の港湾口に屋良座森グスクとセットで建設した台場(砲台を設置した要塞)です。
元は屋良座森グスクに続いて新しく建設したいことから「新(みー)グスク」と呼ばれていましたが、浅瀬に浮かぶ自然石を3つの石橋(大橋・中橋・沖橋)で繋いで築いたグスクであることから「三重(みー 3つの橋)グスク」と記されるようになっています。現在はロワジールホテルの裏手にあり、石積みによる城壁の他に船着場のピット痕が残っています。
三重グスクの周辺地図
屋良座森グスク
屋良座森グスクは三重グスクと対になって港湾口を守備していた台場ですが、現在は米軍基地内にあって見学をすることは不可能になっています。戦前は遠目に遺構が見られたそうなのですが、私が見る限りでは遺構は破壊されて消滅しているようでした。
屋良座森グスクの周辺地図
御物グスク
琉球王朝時代、那覇港は諸外国との交易拠点でしたが、交易の中でも特に重要な宝物や交易品を保管するために築かれたのが御物グスクで役人が常駐していました。
単なる交易の役所ではなく、現代でいうと霞ヶ関のような役割を担う重要なグスクであったようで、第一尚氏から王統を簒奪して第二尚氏王朝を建国した尚円金丸は、護佐丸・阿麻和利の両雄を倒した功績によって「御物城御鎖之側」というこのグスクを司る長官に就任しています。
この職は財務大臣・経済産業大臣・外務大臣を兼ねたような重要ポストで、金丸が後にクーデターによって王統を簒奪する権力の源になったといえるでしょう。
立派なアーチ門などが築かれたグスクは現在は米軍基地内にあり見学は不可能となっていますが(事前に申し込めば見学出来るとの情報あり)、対岸から望遠で見てみるとアーチ門の遺構を見ることが出来ます。当時は小島に浮かんでいたグスクであり諸外国との儀礼の場でもありました。
御物グスクの周辺地図
硫黄グスク
琉球王朝が諸外国との交易に優位な地位にあったのは、火薬などの原料となる硫黄を輸出することが出来たからといえます。沖縄本島では硫黄は産出されないのですが、当時の王朝は奄美大島と周辺諸島を支配しており、そこから産出する硫黄を貴重な輸出品としていました。
この交易の命ともいうべき硫黄を保管しておくために築かれたのが硫黄グスクであり、現在の沖縄製粉(株)の倉庫周辺が推定地とされています(遺構は消滅しています)。
硫黄グスクの周辺地図
南山城
交易に関係したグスクを見学した後は、車で沖縄本島を南下をして南山城(南山グスク、島尻大里グスク)を訪城しました。
三山時代、南山王国の王都であったこのグスクは高嶺小学校と高嶺中学校の間にあるのですが、現地へ着くと目に飛び込んでくる立派な石垣は大正時代のものなので注意してください。
奥に本当のグスクの石積みは存在していますが、この石垣や虎口があまりにも立派なので「さすがは南山王国の居城やな!」と思わず感心してしまったのですが、見事に騙されました(^_^;) 繰り返しますが「グスクの遺構ではない」です。
『前面にある立派な石垣は大正時代に築かれたものなので注意!』
南山城の周辺地図
おわりに
琉球王朝の交易を司ったグスクは今も那覇港付近に存在します。しかし、三重グスク以外のグスクについては米軍に接収されており、その遺構の多くは破壊されてしまっています。
今回、NHK番組の「ブラタモリ」で御物グスクのアーチ門が紹介(2016年3月5日放送による追記)されたのには驚きましたが、対岸から見るには肉眼では無理であるので、タモリさんのような立場で無い人(ほとんどの人がそうですよね(^_^;))は、必ず望遠レンズを持参しましょう!(この記事は続きます)