2013年12月、「信濃の山城と館」(戎光祥出版)、通称「宮坂本」の最終巻である第8巻が発刊されました。
長野県の城巡り本としては、すでに「長野の山城ベスト50」(サンライズ出版)という素晴らしい本が発売されていますが、他府県のベスト50本たとえば「三重の山城ベスト50」や「愛知の山城ベスト50」では県内地域の著名な城跡がすべて載っているのに対して、この「長野の山城ベスト50」では仙当城など、城めぐりを趣味にする人にとっては魅力のある城がいくつも掲載されていません。これらの本が悪いというのではなく、それだけ長野県には魅力的な山城が溢れているということなのです。とても50城では収まりきらないのですね!
信濃の山城と館第8巻
野に埋もれていく「兵どもの夢の跡」を克明に記録するため、すべて歩いて実測した図面類と文献資料や伝承の数々(信濃の山城と館8巻の帯より)
日本四大山城県(長野県・静岡県・滋賀県・兵庫県)の中でも、中世から近世にかけて地侍や戦国大名たちが築いた無数の山城が良好に残るのが長野県。この魅力的な地域の城跡を郷土史家の宮坂武男氏が長きにわたり歩いて実測し、文献資料や伝承と共にまとめ上げたのがこの「信濃の山城と館」シリーズ全8巻で、その収録数は1300城を超えるまさに城巡りのバイブルとも言える大著です。
今回の最終刊には、日本有数の空堀が魅力の仙当城など水内・高井地域の城が収録されています。また全8巻の補遺や著者のあとがきなど、今回も内容は盛りだくさんとなっていて城好きならば是非とも手元に置いておきたい一冊となっています。8巻はまだAmazon等のネット書店では扱っていないので出版社である戎光祥出版に問い合わせてください。
仙当城
日本でも屈指の空堀を有する仙当城は、信濃の国人・市川氏の城ですが、その規模から地方領主が築城できるレベルではなく、上位権力である越後の上杉氏が甲斐の武田氏と激しく争う中で改修されたものと考えられます。城好きには是非訪れて欲しい城跡ですが、この仙当城周辺は熊の生息地であり城域のあちらこちらで熊の痕跡が観られました。時期だけでなく熊対策もしっかりとして訪城しないと危険です。間違っても一人で行こうとは考えないほうが良いでしょう。城巡りのリスクは何があっても自己責任ですが、本当に何かあったら大変ですからね。
『迫力の遺構が見られるが熊出没地域にて単独方法はNG』
仙当城の周辺地図
圧巻の空堀などが見られるが、クマ出没地域にて注意。
http://jibusakon.jp/shiromeguri/others/miyasaka-book
「信濃の山城と館」既刊リスト
おわりに
この「信濃の山城と館」シリーズは一冊9,000円近くしますので、全巻を揃えるとけっこうなお値段になります。しかし400部限定ということを考えると、今を逃すと2度と入手出来なくなる可能性は高いです。
宮坂氏による資料集の発刊は2度目となりますが、図書館でも蔵書していないことから「幻の資料集」などとも言われていました。それだけに今回の発刊はとてもうれしいことでありますし、城好きにとっては1300を超える魅力的な山城の資料を入手できる絶好のチャンスとも言えます。すでに城巡りをしている人も、これから城巡りをやってみようという人にとってもこの一冊はオススメしたいです。
著者が生涯をかけた前人未踏の「城館調査バイブル」である。(信濃の山城と館8巻の帯より)
その多大な労力をかけて城郭資料を残してくだされた城巡りの大先輩である宮坂氏に感謝いたします。